ペットロス・かわいいちゃんの話

生きること

朝からささみ肉を茹でる。

焼き芋も焼き始める。

どれも、あの子の好物だから。

いい匂いが漂ってくると

キッチンの端っこに

いつの間にかちょこんと座って、

いつも笑顔で待っていた。

きびたは…全く興味はないみたい。

あの子、は柴犬で我が家の次男坊。

3年前の今日、

虹の橋へひとりで旅立ってしまった子。

10歳の誕生日を祝ったあの日、

いつも通り元気に散歩をして

いつも通りご飯も食べたのに。

その翌日に急にお腹を下して。

食べさせたものが悪かったかもしれない

と、慌てて動物病院へ行った。

数日間、服薬してもなかなか改善しなくて

病院を変えて、検査を重ねた。

診断は小腸のリンパ腫だった。

1年は生きられない、と説明があったけれど

まったく信じられなかった。

 

がんに良いと言われる食べ物、

消化の良いもの……

あらゆるものを試した。

離れて住む長女が帰省したころに

寛解期があって、長女とは長い散歩もできた。

きっと奇跡がおきる!と

家族のみんなが信じた。

だけど

まもなく日に日に食べられなくなって

注射も点滴も、自宅で私が行った。

柴犬あるあるで、我が家もしかり

散歩の時にしか排泄ができなかったので

玄関に立つのもやっとの体を

毎回抱きかかえて外へ出た。

長年の散歩で顔見知りの

犬友達の方に出会って

事情を話すと、どの方も

『えらい、えらいね』と涙ぐみながら

あの子の頭を撫でてくれた。

 

 

記録的な大雪が続いたある日。

なぜか、あの子は立ち上がって

ふらふらとキッチンへ移動していき

次女とふたりで追いかけて見守る中

そのまま旅立ってしまった。

誕生日のあの日から

たった2ヶ月ほど後のことだった。

 

悲しい、では納められない気持ちがある。

どうしてこんなに涙があるのか

と思うくらい、涙が止まらない。

たくさんの後悔が押し寄せてくる。

次女が「ありがとう」と

何度も繰り返すのを聞いて、

そうだ。ありがとう、なのだと

思いなおしては、また泣いている。

 

雪が解けて、きれいな桜が咲いても

いつもの土手を一緒に歩いてくれる

あの子がいない。

私は、経験がないほどの体調不良で

病院へ通うことを繰り返した。

こんな日々は、半年以上続いた。

 

今でもまだ、時々涙が出るけれど、

写真を見ながら、楽しい思い出も

笑顔で話せるようになりました。

少しずつ私が力を取り戻すまでの

たくさんのできごとはまた、次回に……

ありがとうね。

 

きびたの気持ち

おかあさんは、子供のころから

たくさんの動物と暮らしてきたけれど、

柴犬さんの病気のことは

『どうして早く気付けなかったのか』

『何とか治してあげられなかったのか』

って、悔しくて悲しすぎて

何日も泣いたんだって。

ペットロス、っていうんだと

お姉ちゃんは話していた。

 

ちい姉ちゃんが、お話ししていたよ。

「お母さん、知ってる?

家族として大切に育てられた

動物さんが天国へ行くと、

かみさまが

(あなたのお名前は?)

って、確かめるんだって。

『はい。かわいいちゃん、といいます』

『僕も!かわいいちゃんです』

って、みんなが言うんだってさ。

どの子も家族から

『かわいい!』とか

『あら、かわいこちゃん』って

何度も何度も繰り返し言われて、

大切にされてきたから、なんだって」

おかあさんは

「それ、よくわかる~」

って笑った。

お母さんが笑うと、

柴犬さんは嬉しそうだよ。

内緒にして、って言わてれてるけど、

ボクだけは

時々、柴犬さんがおうちに

遊びに来ているのがみえるんだ。

 

 

 

明日もいい日になりますように。

 

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