3月〇日 晴れ
おかあさんが、動物病院に
ボクのワクチン注射をするため
予約の電話をしていた。
うえぇぇ……
だけど、ボク、実はそんなに
動物病院はきらいじゃない。
消毒のニオイとか、気になることもあるけど、
先生はいつも
「どれどれ。ああ、この子は
性格のいい子ちゃんだね~」なんて言って
ボクが怖くないように話しかけてくれる。
そして、看護師さんも。
ボクのうちの大きいお姉ちゃんも、
動物看護師さんだから、
病院で看護師さんに
優しく抱っこされたとき、
遠くにいるお姉ちゃんのことを
思い出して、会いたくなった。
おかあさんも看護師なんだけれど、
お仕事はちがうことをするのかな?
…そういえば、知り合いの人におかあさんが
なんだか難しい話をしてたなあ。

長女が大学の獣医学部の勉強で、
初めての授業を受けてきたとき、
内容を聴いて、私は衝撃を受けました。
授業は《安楽死》から学び始めるんです。その倫理たるや、徹底した内容でした。
命を救うことと、その命をいただくこと。両方の命の、倫理観を学ぶ…。
娘は詳しく話さないけれど、
のちの解剖の学習では
学生達が実際に、動物の安楽死にも携わることになるのです。
「獣医は畜産の仕事にも通じるのだから、学ぶことは当然でしょう」
と娘は言ったけれど。
看護師の自分は、
この時かなりショックでした。
昔の私は、看護師としてまず『救命』だったり
『死を迎える人へ』みたいな
学びを受けました。
最後まで命を守る尊い仕事、と
心から思っていたし、
卒業してからも『命は救うもの』、
それが当然で、最善のことと疑いもせず
ずっと働いてきたけれど。
ああ、私は《人間が中心の命》しか
見えていなかったんじゃないの、
ってなんだか申し訳ない
自分が情けないような気持ちで
たくさんのことを考えさせられました。
…ね?なんだか話が難しくて、
ボクは、ほとんどわからないんだけどね。
「じゃあ、おかあさんは、どうして人間の看護師になったの?」
っていう話も聞いたから、
それはまた今度。
明日もいい日になりますように。