春のにおい

生きること

3月〇日  晴れ

今日はお天気が良くて、出窓もあたたかい…いや、暑い!

なんだかいつもと違う。

隙間から入ってくる、風のにおいが違う。

「ねえ、玄関のドア、少し開けてみてよ~!」って

おかあさんに言った。

いつものおかあさんなら「あーもう、わかった」

って、抱っこしてドアを少し開けてくれるのに、

今日は違った。

赤いバッグを持ってきたから、病院なのかとボクは思った。

おかあさんが赤いバッグにボクを入れた。

自動車に乗せられて、いつもなら

3回くらい「ニャー」って言えば病院到着なのに。

あら、ずいぶん動いている…。少し怖くなってきたから

「フンニャー!アーオーーン」を繰り返しても

おかあさんは、アッハッハって笑ってる!😡

「着いたよ」って、車の動きが止まった。

おかあさんが少ーし、運転席の窓を開けた。

木と葉っぱのにおいがする…。

「きび、みて!鳥がたくさんいる」

「ああ、ハクセキレイ。あれは、ヒヨドリかな」

と、おかあさんはニコニコしている。

おそるおそる、おかあさんの膝に乗ってみた。

ジィーッ、チッチッ、チュンチュンって、

いろんな声がきこえる。初めてきく声もあったよ。

散歩中の大きな犬さん🐕が通り過ぎる。

少し遠くでにんげんの子どもたちが、笑ってる。

ボクの心臓はドキドキしていたけど、

いろんなものを見たくて、聞きたくて

きょろきょろした。

「あらら、きびの肉球、しめってる~」

って、おかあさんが笑う。

…ボクは緊張すると、肉球に汗をかくんだよ!

「鳥は、昼間の間に、ようやくご飯食べて…。

もうすぐ日が暮れるから、おうちに帰るんだよ」

外でご飯を探すなんて、偉いな。

もう少し、外のにおいをかいでみたくなって、

ボクは鼻を動かしてみた。

知らないにおいは、ドキドキするけど

嫌いじゃないし、今日はちょっと楽しい。

「次に来るときは、少しだけ外にも出てみようか。

きっと、桜もきれいに咲いていると思うよ」

おかあさんも、楽しそうだった。

桜ってどんなにおいがするんだろうね。

明日もいい日になりますように。


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