4月〇日 晴れ
今日は、ちょっといやイヤなことがあった。
窓から外を見ていたら、カラス君が来た。
時々「お前は外に出られないのか?」
「かわいそうなやつ」って、だいたい
意地悪なことを言われるんだけれど。
今日はボクの ”しっぽ” を見て、笑ったんだ。
「そんな曲がったへんなしっぽ、
見たことないぞ!」って。
ボクのしっぽは、真ん中あたりから
曲がってて、まっすぐの形じゃない。
生まれた時からこんなだった。
そして確かに、きょうだいのしっぽ
はみんなまっすぐだったな。
自分じゃもう、どうしようもない
体のことを言われて
ボクは返事ができなかった。
「だからバランスが取れなくて、この前も窓にのぼるとき落っこちたんだろう?」
って、カラス君は
もっと大きな声で笑った。
そして
「お前、他の猫とは全然違うぞ!ダメな猫!」
って言って、飛んでいった。
どうしてだろう、ボクはいつもより
ずっと悲しい気持ちになった。
おかあさんのところへ行って、
聞いてみた。
「ボクのしっぽ、曲がってるからおかしい?」
「こんな猫は、猫じゃないの?」
おかあさんは、ボクを抱っこしてくれた。
そして「もしも、きびたのその”しっぽ”が
みんなと同じようにはできないことの
原因だとしても、少し時間をかけたら
窓にものぼれるよね。
『やりにくいこと』は
あるかもしれないけど
『できないこと』はないんだから、
大丈夫」
って、おかあさんは言った。
ボクは少し安心したけど、
また聞いてみた。
「みんなと違うことは、よくないこと?」
おかあさんは、少し考えて
「だれかを困らせようか、って考えて
『みんなと違うこと』を続けるのは、
よくないな、と思う。
でもさ、みんなと同じ、って、
いったいなんだろうね…」

そして「きびたのようなしっぽのことを、
”かぎしっぽ”ってニンゲンは呼んでね、
ヨーロッパの遠い国のほうへ行くと、
数が少なくてとても珍しいから、
『幸運を呼ぶ猫』っていわれて
大切にされるみたいよ」
「その曲がったしっぽが、
幸運を引き寄せて運んでくれる、ってね」
…知らなかった~!!
カラス君は、空も飛べるし
寒くても外で一生懸命に暮らしてる。
ボクが知らないことも、
たくさん知っている。
でも、カラス君にはしっぽがない。
ボクには、しっぽがある。
曲がったしっぽでも、これがボク。
おかあさんは
「鼻からしっぽまで、
きびたの全部がかわいくて大好きだよ」
って言ってくれた。
…えへへ、そうなのかぁ
明日もいい日になりますように。